PAST EXHIBITION

ディスディスプレイ

会期

2021.07.07(水)~07.25(日)
※ 水曜日〜土曜日、最終日曜日開廊

営業時間

13:00 – 19:00

ご来場に際して

*ご来場の際は、マスク着用、検温、消毒にご協力お願いします。

*会場の混雑状況により入場制限を設ける場合があります。列にお並びいただく場合があること、予めご了承ください。

*状況に応じて、会期・営業時間の変更する可能性があります。変更の際は、ギャラリーウェブサイトとInstagramにてお知らせ致します。

フィリオ社について

https://filio.cc/

CALM & PUNK GALLERYでは、フィリオ社との協力のもと、
7/7(水)~7/25(日)にて、企画展「ディスディスプレイ」を開催致します。

本展が契機とするのは、「ディスプレイ派」という概念。これは、主にポスト・インターネットアートの文脈において、液晶ディスプレイのイマージュや物質性を扱う美術作品、またそれらを制作する人を指すものとして用いられてきました。本展では、この「ディスプレイ派」の手つきをポスト・インターネットアート的文脈からではなく、展示空間内にイメージデータをインストールする者=インストーラーの存在をもって再検討していきます。
そうすることで、通常は複製可能であるデジタルのイメージデータが、展示空間内において固定され、「それでしかない」ー つまりユニークな状態となる可能性や、イメージデータを展覧会において「そうでしかない」状態たらしめる展覧会企画者/作家/インストーラー等々の関係構造を捉え直していきます。

作品制作は、いずれも1994から99年生まれ、ポスト・インターネットアートというバズワードの影響をもろに受けつつも、「インターネット」の肌感がポスト・インターネットアートのそれとは異なる世代の作家たちによるもの。
大西晃生、落合晴香、Dave Kabata、Dolphin Feeling、 根岸桃子、布施琳太郎、八木幣二郎、山口梓沙の8名がそれぞれ作品を制作し、展覧会企画と展示空間へのインストールは竹久直樹、米澤柊、しばしん、臼井達也らによって運営される「フィリオ社」というディスプレイインストール業社が行います。

また、本展覧会に併せて冊子の刊行も予定。この冊子は、そもそもイメージデータが「それでしかない」状態、とはどのようなことなのかを検討すべく、フィリオ社に加え、肥高茉実、柴田(パソコン音楽クラブ)、フィルマ(うしお鶏+西村梨緒葉)、cha-bowらの制作物がインストールされます。

本展は、インストールという視座から展覧会の枠組みを捉え直し、展覧会における「表示」の可能性を模索するものになります。

展覧会について

「ディスプレイ派」という言葉は、主にポスト・インターネットアートの文脈においてディスプレイのイマージュや物質性を扱う美術作品、またそれらを制作する人のことを指す概念です。2017年に日本のアーティストである谷口暁彦 (1983-) が提唱したものの、定義自体の曖昧さや派に属するアーティストの示しずらさ、さらにはアーティスト自身があえて「派」を名乗るという露悪的な態度も相まって、いっときのトレンドとして消費されてしまいました。

本展はこの「ディスプレイ派」の再検討を契機としています。2017年以降、決して少なくはない人数の作家が、ディスプレイを単なるイメージデータの表示機器としてではなく、何らかの形でディスプレイと物質、例えば絵具やカメラ、印刷物や電源コード、さらには展示空間自体が接触することによって直接的または記号的に作用し合うような作品制作を行ってきましたが、一方でそうした作品群を「ポスト・インターネット」というものだけで説明することは困難でした。

そのため本展においては、「ポスト・インターネット」ないしは「インターネット」というような、2021年現在において単一の意味を指し示すことができない雰囲気を用いることはありません。本展において検証されるのは「ディスプレイ派」における作品のインストール ー 通常は複製可能なイメージデータを一時的に展示空間内に固定し「それでしかない」状態にする、という技術です。

美術展の展示空間内において、展示企画者や作家の名前、制作年月やイメージデータの解像度、その制作に用いられたソフトウェアが表記されることはあっても、 電源コードの配線にかかった時間や壁を研磨した人間が記されることはあまりありません。また、アトリエや賃貸スペースなど所謂「ホワイトキューブ以外」での展示の流行、またそうした場所でディスプレイマウントを設置可能な壁が無かったり、また壁を建てねばならなかったり、電源の引き回しの不自由さ、さらには日本において2020年の東京オリンピック開催決定を見据えた街頭ディスプレイの入れ替えゆえに、インターネットの中古市場にて大型のディスプレイが安い値段で流通したこと…。

このような状況においてもインターネットはもはや私たちの制作を含めた日常生活のおおよそに関連し、いつであっても作家のそばにはディスプレイやインターネットが、そしてイメージデータの制作が存在し続けます。翻って現在の「ディスプレイ派」とは、展示空間内にイメージデータをインストールする者=インストーラーの存在と、その者たちを取り巻く身近かつ現実的な状況によって表示可能なものとなっているはずです。

本展は、フィリオ社というインストール業者によって企画されます。彼らはまず1994から99年生まれの…ポスト・インターネットアートというバズワードの影響をもろに受けつつ、「インターネット」の肌感がポスト・インターネットアートのそれとは異なる世代の作家を招聘し、作品制作を依頼しました。そして、フィリオ社は「ディスプレイ派」のトンマナに沿う形で、いかような作品であれ「ディスプレイ派」にする、というような手つきでインストールを行います。
本展にインストールされるのは作品であると同時に、「ディスプレイ派」という、展示空間における「表示」の在り方の可能性でもあるのです。

《 アーティストプロフィール 》

still life #17(2018)

大西晃生
1996 年岡山県生まれ。2019 年京都精華大学デザイン学部卒業。
2018 年 CAF 賞 2018 入選、2020 年シェル美術賞 2020 入選。
主な個展に「live coverage」(KUNST ARZT、2020)、「still life」(ギャラリークトー、2021)、「意識のコンテナ」(Alternative Space yuge、2021)、グループ展に「YY-U25」(ygion、2020)、「シェル美術賞展 2020」( 国立新 美術館、2020)、「ALLNIGHT HAPS 2019 後期「Kangaru」(HAPS オフィス 1F、2019)、「CAF 賞 2018」(代官山ヒルサイドテラス、2018) など。
https://chibakeru.tumblr.com/

Botanical Garden (2019)

落合晴香
1997 年、大分県生まれ。東京都在住、長岡造形大学視覚デザイン学科卒業。 紙に描いた筆跡を切り取り、再構成するドローイングの制作をしている。また、出来上がったドローイングを さらに写真に収め、編集を加えることで、イラストレーションと写真の中間表現を試みている。
第 209 回 The Choice 入選。MUSIC ILLUSTRATION AWARDS 2020 ノミネート。 https://www.instagram.com/botanical_garden44/

FINDING DAVID (2020)

Dave Kabata
アーティスト = クリエイター = デザイナー。1995 年、神奈川県横浜生まれ。 米カリフォルニア州サンディエゴにて幼少期を過ごし、2003 年帰国。多摩美術大学グラフィックデザイン学 科卒業。デザインを通じて、先天性色覚異常、遺伝的肥満体質、ADHD、TCK が抱える摩擦など、自らが対峙 してきた心的複合体に焦点を当て、それらが孕む社会的問題を他者と共有し、多面的な理解を深めるための 作品制作を行っている。
https://www.instagram.com/dave_kabata/

good time (2020)

Dolphin Feeling
マ .psd の制作による感情があるイルカ。LINE スタンプをはじめとした様々な媒体で制作・発表されている。
https://www.instagram.com/dolphinfeeling/

猫昼夢 (2021)

根岸桃子
1996 年生まれ。東京都出身。2018 年多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。 たくさんの猫と暮らしています。
https://www.instagram.com/momoko.negishi/

隔離式濃厚接触室(ウェブページ、2020 年) 写真:竹久直樹

布施琳太郎
アーティスト。1994 年生まれ。2017 年東京藝術大学美術学部絵画科(油画専攻)卒業。 現在は同大学大学院映像研究科後期博士課程(映像メディア学)に在籍。
iPhone の発売以降の都市において可能な「新しい孤独」を、情報技術や文学、そして洞窟壁画をはじめとした 先史美術へのリサーチに基づいた作品制作、展覧会企画、テキストの執筆などを通じて模索、発表している。 展覧会企画に「iphone mural(iPhone の洞窟壁画)」(BLOCK HOUSE、2016)
「The Walking Eye」(横浜赤レンガ倉庫、2019)「隔離式濃厚接触室」(ウェブページ、2020) 「沈黙のカテゴリー」(クリエイティブセンター大阪、2021)など多数。
https://rintarofuse.com/

creature_typography_3 (2021)

八木幣二郎
1999 年生まれ。都立総合芸術高校卒業後、東京藝術大学入学。 グラフィックデザインを軸にデザインが本来持っていたはずのグラフィカルな要素を未来から発掘している。 若手現代美術家の展示のポスターやビジュアルなどのグラフィックデザインをはじめ、映画ポスターやブックデザイン なども手がけている。
https://www.instagram.com/heijiroyagi

静かな部屋(2018)

山口梓沙
1995 年東京都生まれ。2018 年多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。
2017 年キヤノン写真新世紀 優秀賞 ( 清水穣 選 )。主な個展に「夏日离别」(明写館、中国 2020)、 展覧会に「Touch of Summer ̶夏の手触り」( ロロ・ピアーナ銀座店 4F、東京 2020)、
「showcase #8 ” 共振体-Resonators”」(eN arts、京都 2019)「Shining in your eyes ’18」(Gallery 916、東京 2018) 「写真新世紀 2017」(東京都写真美術館、東京 2017) など。
https://azusayamaguchi.com/

《 寄稿者プロフィール 》

柴田 (パソコン音楽クラブ)
1995 年大阪府生まれ パソコンで音楽を作っています。

cha-bow
1994 年生まれ。エフェクトデザイナー。多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術コース卒。 ゲームを用いた作品制作を行う。

肥髙茉実
美術家/文筆家。東京都出身。2018 年多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業、卒業制作優秀作品賞を 受賞。
同年よりウェブ版『美術手帖』ほか『i-D』『THE FASHION POST』『tattva』などで執筆。『She is』でコラム
「孤島にて」連載。主な展覧会に 2020 年「静謐な光、游泳のかたち」(Sta.)など。

フィルマ ( うしお鶏 + 西村梨緒葉 )

うしお鶏
1998 年東京生まれ。「待ち合わせ」や「忘れ物」などの身近なシチュエーションと、そこに現れる他者の存 在感を題材にし、映像や空間を用いた作品制作に近年取り組んでいる。イラストや漫画の制作も行う。主な 展示に、「AB」( 米澤柊との二人展、新宿眼科画廊、2020)。キャラクター研究会を西村梨緒葉と共に主催している。

西村梨緒葉
1996 年生。多摩美術大学メディア芸術コース卒、東京藝術大学メディア映像専攻休学中。鑑賞 / 上演 / 再生 をキーワードに、鑑賞経験がそのまま物語を再生することでもあるような形式について考えている。おもに音声やその編集、演出、空間などを用いて作品制作を行う。2020 年からキャラクター研究会をうしお鶏と共 催。近年の主な発表に、2020 年「Emergency Call」( 大岩雄典企画・電話で聴く展示 ) 参加、2021 年「エクメネ」展示記録テクスト担当、トークイベント「〈エフェクト〉としての〈キャラクター〉」企画・司会などがある。