UPCOMING EXHIBITION
UPCOMING EXHIBITION
2025年 6月20日(金)− 6月29日(日)
13:00-19:00
水曜日 ~ 土曜日、最終日曜日
入場無料 / 上記時間外アポイントメント制にてオープン可
CALM & PUNK GALLERYでは、2025年6月20日(金)から6月29日(日)まで、メディアアーティスト穴井佑樹の個展「Nature is a medium」を開催いたします。
穴井は2012年に、当ギャラリーにて音楽家・高橋英明およびUwe Haasとの協働によるサウンドインスタレーション《on the ground -invisible inaudible-》に参加しました。本展は、自身の構想を軸とした初の個展としての発表となります。前回の展示では「見えないもの」「聞こえないもの」に向けた感覚的な探求を提示した彼は、その後も自然とテクノロジーの関係性を軸に、国内外で作品を展開してきました。近年は、チェコのピルゼンやギリシャのアテネなどでの招待展示をはじめ、光や音を用いた作品をヨーロッパ・アジア各地で発表。また、2018年には世界最大級のメディアアートフェスティバル「アルスエレクトロニカ」(オーストリア・リンツ)、そして2024年には台湾国立美術館にて、《in the rain》を発表。文化や気候、宗教観の違いが「光」や「自然」への感受性に反映される場面にも多く向き合いながら、作品と鑑賞体験の関係を改めて問い直してきました。国内では、麻布台ヒルズのオフィスエントランスにて常設インスタレーションを手がけるなど、コミッションワークにおいても表現性を追求しています。
本作は、サラウンドスピーカーと発光バー(線上にLEDが配置された発光装置)を用いたインスタレーションで、プログラムされた光の点滅や動、音の位相や空間の変化によって、目には見えない“エネルギー”という存在を、光や音の気配として立ち上げていきます。装置は、立体的に配置されたLEDの発光バーによって空間に動的な構造を生み出し、要素と機能を最小限に絞り込むことで、空間そのものが知覚の媒体として立ち上がります。
視覚的な補完やズレ、光と影の対比が空間の中に現れます。鑑賞者は、内と外、個と世界との境界がゆるやかに溶け合う感覚のなかで、記憶や感覚の奥深くに静かに触れます。
音響面では、音楽家・メディアアーティストの高橋英明がサウンドプロデュースを担当。聴覚を通じて空間にアプローチする試みを展開しています。高橋は2012年に、当ギャラリーにて自身の構想によるサウンドインスタレーションを発表しており、本展では、再び両者がタッグを組み、音と光が交差する新たな表現に挑んでいます。
穴井はこれまで一貫して、抽象的な美術用語ではなく、「現象」や「機能」といった言葉を用いて作品を語ってきました。そこには、技術的な成果ではなく、目の前の体験そのものの質にこそ価値を見出すという姿勢があります。また、ハイレゾ化・高精細化が進む今日のテクノロジー表現とは異なる、抽象的で“エモーショナル”な領域への指向があります。
都市と自然、記憶と技術の間(あわい)に現れる新たな風景を、ぜひこの機会にご高覧ください。
私は、自然を通して、自然と自分との記憶を反芻し、 また、自然の大いなる時の流れを感じることで、 これまでの生きてきた時間、そして、これから生きていく、生を肯定する。 自然は、自然のままである。 しかし、そこに存在するだけでメッセージを持つ。 その解釈は、人によってそれぞれである。 例えば、多くの人は、空から降り注ぐ雨や、燦々と真夏に輝く太陽、 海面で揺らめく波模様などの自然から想起される思い出を持っている。 そして、これらの景色に再び相まみえた時、 インタラクティブメディアとして機能し、過去の記憶を色鮮やかに呼び起こす。 つまり、自然はただ存在しているだけにもかかわらず、 私達一人ひとりに対してメッセージを持っている、メディアであるといえる。 私は、自然の持つ豊かな表情がどのようなメッセージを生み出し、 人々の記憶として定着されているかについて強い関心がある。 そして、 自然を通して、自然と自分との記憶や、大いなる自然の時の流れを感じることは、 これまで生きてきた自分を肯定することでもあり、 これから生きていくであろう、大いなる時間を肯定するのではないだろうか。 これは、多くの当たり前が音もなく変化していくなかで、確かにここにある自分を見出そうとする行為でもある。
−穴井佑樹
穴井佑樹 Yuki Anai
メディアアーティスト。大分県生まれ。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科修了。「自然はメディアである」をコンセプトに、光や音の先端技術を用いて、自然の持つ多様な側面やメッセージをメディアアートとして表現する。国際的に名高いメディアアートの祭典「Ars Electronica Festival」 (オーストリア·リンツ)や、「Athens Digital Arts Festival」 (ギリシャ・アテネ)、台湾・国立美術館で開催された「2024 International Techno Art Exhibition : Right Where It Belongs」、国際現代芸術祭「中之条ビエンナーレ」(日本・群馬県)等に招聘されるなど、国内外問わず活動を行う。
高橋英明 Hideaki Takahashi 音楽家
東京藝術大学音楽学部作曲科卒業、同大学院修了。mjuc、hideaki takahashiなど複数名義でCDやDVDを多数リリース。メディアアートでは、メディアオペラ『hour blink』や、3.11をテーマにした『on the ground』『The Hole』などを制作。teamLab BorderlessやPlanets、アブダビのPhenomenaなど多数のチームラボ作品に音楽で参加。『攻殻機動隊(新劇場版)VR』はベネチア国際映画祭でBest of VRに選出。東京オリンピック公認のアイヌ舞踊音楽や、都庁でのプロジェクションマッピング『Tokyo concerto』(2024年)も手がける。