PAST EXHIBITION

dog, ghost by AUTO MOAI, Nick Atkins

会期

11.20 (土) 〜 12.05 (日)
※ 水曜日〜土曜日、最終日曜日開廊

営業時間

13:00 – 19:00

注意事項

※ 展示及び作品販売に関してお電話でのお問い合わせは、原則お控えいただいております。

※ Nick Atkinsの作品についてのお問い合わせは、CALM & PUNK GALLERYまでメールにてお願い致します。

CALM & PUNK GALLERY では、11 月 20 日からAUTO MOAI と Nick Atkins による展示「dog, ghost」 を開催いたします。

AUTO MOAI は今年、「あやまった世界で愛を語るには」( イセタン・ザ・スペース、東京 )、Andy Rementer と の2人展「PERSONAL LIFE」(everyday mooonday、ソウル )、そして「Big Ass Beyond Mountains」(Gallery Ascend、香港 ) とアジア各国で精力的に展覧会を行ってきました。

Nick Atkins は、2018 年にグループ展「“ROID CYCLE” curated by Crack Gallery」(GALLERY TARGET)に参加して 以来、3 年ぶりの東京での作品発表となります。歴史からの引用、ポップなアイコン、そして彼自身の人生を投 影した視覚言語で構成される独特な作品群はユーモアと共に現代社会の既成概念や常識を検証するかのようです。

本展は、以前より交流のある作家同士のお互いへの興味がきっかけとなりました。彼らの表現に共通するのは、絵画史や社会通念に於けるシンボルやレトリックを用いて作られた読み解きの装置のような作品であると同時に、感情に揺さぶりをかける個人的なナラティブも兼ね備えている点と言えるでしょう。

会場では、AUTO MOAI の油彩画・水彩画と共に、Nick Atkins の絵画作品やウッドパネル作品など新作群が発表 されます。CALM & PUNK GALLERY の 2021 年を締め括る、正に今日的な展覧会となります。ご高覧頂ければ幸い です。

「dog, ghost」によせて

AUTO MOAIの描く肖像は顔を持たない。人物を特定できる特徴が描かれてない作品群は主に匿名性という言葉と共に紹介されてきた。それは現代都市部に於ける一個人という存在の曖昧さ故に、自分の顔が分からなくなってしまった儚い幽霊のような自己認識の表れの一部と解釈できる。描く景色は曖昧な記憶や夢のようなものと、友人との私的な時間を思わせるものがある。

NICK ATKINSの作品では、その都度の彼自身の自己認識がキャラクターとなって描かれる。彼が絵を描き始めた時に虫だったそれは近年、猫になり本展では犬になっている。また、長尺の一人語り音源から、立体彫刻など様々なメディウムの作品群で構成されるハンジ・パーティという自身の人生を投影したコンセプト・シリーズを制作している。コミック表現や対照的な写実的表現など複数の視覚言語が織り交ぜられ、死、性的逸脱、社会への拒絶、薬物など一般にタブーとされる題材をユーモアを交えてポジティブに描き出す。

両者の作品は共通するいくつかの側面を持っている。それぞれの人生に起きたこと、本来は誰も知る由のない個人史のようなナラティブを提示し鑑賞者に感情的な何かを想起させること。同時に、絵画史や社会通念の中でも意味を持つシンボルや構図を用いて描くことで、歴史や社会に接続する読み解きの装置となること。例えば、AUTO MOAIの作品に度々登場する「ヤギ」はキリスト教文化圏では「悪魔」の象徴であるが、それは異教徒たちが信仰する「神」でもあった。NICK ATKINSの作品に登場する犬の置物はスタッフォードシャードッグという英国でヴィクトリア時代に大流行した窓際に置くための装飾品で、ブルジョワが好んだ古き良き伝統の品である。そして、「2匹の犬が向かいあって置かれていれば旦那が家にいる」合図で「背中合わせで置かれてる時は旦那がいない」合図だったこともある。つまり、逢引の為の道具だったのだ。

NICK ATKINSの現在の自己認識である「犬」は「忠誠」のシンボルであると同時に「不忠誠」も暗喩することがあるし、ひどい仕打ちをした男が「あの犬野郎」と罵られることもあるだろう。そして、AUTO MOAIの作品に登場する「画面の中の2人の人物」は「聖」と「俗」、または「理性」と「欲望」の表れのように受け取ることができるかもしれない。「忠誠と反忠誠」や「理性と欲望」などから生まれた寓話や神話は淫靡だったり残酷なこともあるが、同時にごく身近な話に聞こえることもある。視覚化や言語化されることはないような、止むことのない二律背反な思考というのは時代や場所を超えてあらゆる人間が持つものだからだろう。そこで生まれる葛藤、反抗、受容、苛立ち、衝動や抑制など数えきれないくらいの感情と思考、そして、その間での揺らぎ。2人の作家は共にそう言ったアンビバレンスな何かを扱っているとも言える。

前述のようなシンボルの歴史が始まった頃以上に、現代社会は相反する性質や状況を誘発し本来的には不可侵であるべきな自己の存在に揺さぶりをかける。それは現代を生きる人々と不可分の状況であるはずで、2人の作家の描く世界はとても今日的である。

ー 安部憲行 / CALM & PUNK GALLERY

オートモアイ / AUTO MOAI
2015年にモノクロドローイングの制作を中心に活動を開始、2018年からカラー作品とキャンバス制作を始め、2020年11月以降は油彩作品を公開。平面での作品発表とあわせ、立体作品も発表している。近年の主な展覧会は2020年「Buoy」(CALM & PUNK GALLERY、東京)、2021年「Big Ass Beyond Mountains」(香港、Gallery Ascend)、また、2021年春にはAndy Rementerと「PERSONAL LIFE」(everyday mooonday、ソウル)を開催。
https://www.instagram.com/auto_moai/

ニック・アトキンス / Nick Atkins
ニューヨークを拠点に活動している。絵画、フィルム、彫刻、そしてファッションを配合させた彼の作品群は、歴史からの引用、ポップなアイコン、そして彼自身のユニークな視覚的言語などで構成される。遊び心とやんちゃさと共に、ありきたりのイメージやストーリーラインを混乱させる為にアプロプリエーション やモンタージュ的手法を用いている。

彼のサイト・スペシフィックなインスタレーションは世界を構築することを意図しており、自身のイマジネーションから生まれたキャラクターや動くオブジェで埋め尽くされる。彫刻作品ではスケールと重量を脆さと儚さと対比させ、素材やテーマ性を通じて環境課題への関心を示している。

粗雑でユーモラスな絵画作品はデジタル領域への言及でもあり、「生きる喜び」 と 「性的逸脱」 を表しているカートゥーン・キャラクターと現実世界の沈滞が対立している。
https://www.instagram.com/electromagnetic_studios/