PAST EXHIBITION

"Alter Being: Only the Hat Knows"
イ・ソンヒ・TZUSOO curated by sangheeut

開催日時

2024年7月19日(金) ~ 8月4日(日)
13:00-19:00
水曜日 ~ 土曜日、最終日曜日
入場無料 / 上記時間外アポイントメント制にてオープン可

韓国・ソウルを拠点として実験的なアートへのアプローチに挑戦するギャラリーsangheeutにより、2024年7月19日から8月4日まで、東京・CALM & PUNK GALLERYで、韓国のアーティスト、Seounghee Lee(イ・ソンヒ)とTZUSOO(チュースー)の作品を紹介する”Alter Being: Only the Hat Knows”を開催いたします。この展覧会は、CALM & PUNK GALLERYとの協力によるもので、両ギャラリーが各国のアーティストを相互に紹介する交流プログラムの一環になります。韓国のアーティストであるイ・ソンヒとTZUSOO、そして日本のアーティストである岡田舜と成田輝は、現実と虚構、存在と非存在の間を行き来します。それぞれの作品を通じて、我々に代替的な存在の可能性を提示し、「Alter Being」というタイトルのもと、並行して展覧会を開催いたします。

sangheeutが企画する”Alter Being: Only the Hat Knows”は、イ・ソンヒとTZUSOOの作品を日本で紹介する初めての機会となります。両アーティストは、人間と非人間の相互作用およびその共生の可能性を探求し、それぞれ独自の作品世界を構築しています。TZUSOOは、身体と物質の関係を基盤に、多様なメディアを通じて包括的な作品を展開し、イ・ソンヒは、我々の周囲に最も身近に存在する非人間の伴侶である犬と人間の深い絆を探求しています。

今回の日本での展示のサブタイトル”Only the Hat Knows”は、詩人Lim Seung-yu(イム・スンユ)の詩「帽子の効果」に触発されたものです。スンユは、詩の中で「非人間」という言葉が一般的に連想させるペットや機械にとどまらず、我々の周囲に広がる物や食べ物、シンボル、社会的システムなどへ非人間的存在まで拡張し、人間(語り手)と一連の非人間的存在の関係、そしてそれらが人間に与える影響を描いています。「帽子の効果」では、帽子を被って親戚の家にお使いに行く一人の少女の旅を描いています。帽子を被る行為は家族と離れることを意味しますが、帽子は少女を想像の空間へと導き、旅を共にします。そして帽子と少女が共有する様々な想像の空間とその物語は「帽子だけが知っている」のです。

“Alter Being: Only the Hat Knows”おいて、イ・ソンヒとTZUSOOは、災害的状況や不確かな未来において、我々が取るべき行動は人間中心主義的な思考から脱却することであると示し、我々を取り巻く無数の存在や物との連帯を試みる可能性を提示しています。
イ・ソンヒは、我々の日常に当たり前に存在するものへの考察と、それにまつわる神話や物語のリサーチを基軸に個人的な空想の物語を作り上げ、作家特有のウィットを加えます。特に、現代人の生活において切り離せない存在である伴侶の犬に関する文化的、芸術的、科学的な探求と、共に暮らす中で得たインスピレーションを絵画、彫刻、インスタレーションに展開しています。今回の展示では、歴史上の繁栄した文化圏において動物が神秘的な役割を果たしていたことを参照とした新作の絵画作品と犬の彫刻シリーズを展示します。ソンヒの絵画作品は、日常生活にあるオブジェクトを神話上の存在と図像的に結びつけ、複合的なレイヤーとして存在する関係性の可能性を表現するとともに、人間の日常の瞬間を犬を含む様々な動物に置き換えることを特徴としています。また、ソンヒの彫刻シリーズ「Dog-God」(2021~)は、神と犬の類似性についての独特なアプローチを示しています。ソンヒは、神の顔があるべき場所に犬の顔を配置することで、我々の日常や歴史の中で見過ごされ、忘れられた犬について再考させるだけでなく、我々のもつ周囲への認識に目を向けさせます。

一方、TZUSOOは、2021年にAIを活用とした音楽会社の提案でバーチャルインフルエンサー「エイミー」を創り出し、以来、ビデオ、ネオンサインのインスタレーション、AIを駆使した様々な作品に登場させ、自身の作品世界を更新し続けています。TZUSOOの「サイボーグ宣言」(2021)は、「エイミー」の生活を描いた「エイミーのメランコリー」連作の一つであり、「エイミー」がサイボーグの身体からの解放を夢見ながら、ダナ・ハラウェイの「サイボーグ宣言」を浮遊しながら朗読する様子を描いています。TZUSOOは「この宣言が有効な時代は、まだ問題が至る所に存在する時代だ」と述べ、ハラウェイの宣言が依然として妥当な時代に生きる我々にとって、人間と機械、人間と非人間存在の関係の再定義が依然として必要であることを強調しています。また、このモチーフから始まった「DALL・Eのエイミー」シリーズは、AIプログラム「DALL・E」にいくつかのキーワードを入力して生成された画像とネオンサインをコラージュした作品です。AIとの協働を可視化し、TZUSOOは人間と機械の間の階層的な関係ではなく、平等な関係の構築を目指しています。TZUSOOにとって、「DALL・E」が生成した「エイミー」は、新たな創作の可能性を意味します。

イ・ソンヒ (b. 1994)

ロンドン芸術大学チェルシー・カレッジ・オブ・アーツで美術を専攻し、ソウルの弘益大学校大学院で東洋画を修了。Onsu- Gongan(ソウル, 2020)、Mulle Art Space(ソウル, 2021)、This Weeknd Room(ソウル, 2023)で個展を開催。OF(ソウル, 2020)、Cube Art Museum(ソンナム, 2023)、LUPO gallery(ミラノ, 2023)、Jeonbuk Museum of Art(ワンジュ, 2023)などのグループ展に参加。現在、ソウルを拠点に活動する。

HP https://www.leeseounghee.com/
Instagram @end_of__summer

TZUSOO (b. 1992)

ソウルの弘益大学で美術学士を取得し、ドイツのシュトゥットガルト国立造形美術大学で修士課程を修了。ジンデルフィンゲン市立美術館(ドイツ, 2020)、ElectroPutere Gallery(ルーマニア, 2021)、SOMA Art Space 700(ドイツ, 2022)、Together Together(ソウル, 2022)、sangheeut(ソウル, 2023)などで個展を開催。シュトゥットガルト州立美術館(ドイツ, 2021)、文化駅ソウル284(ソウル, 2021)、京畿道美術館(アンサン, 2022)、HITE Collection(ソウル, 2022)、ヘッセル美術館(ニューヨーク, 2023)、国立現代美術館(チョンジュ, 2024)などの国内外で開催されたグループ展に参加。現在、ベルリンを拠点に活動。

HP https://www.tzusoo.com/
Instagram @tzusoo